第1章 Z=1 魔導士R
少女の呟きは消え入りそうなか細い声だった。
それでもルーチェははっきりと聞き取れた。
金髪の女子の姉を失いたくない、そんな強い思いからか、拳を握り込んでいた。僅かにその拳は震えていた。
(この子のために、なにかできることは---)
お互いに言葉を交わさず、それぞれが思考をめぐらせている時だった。少し離れたところで、パチッという大きな音がひびき、二人とも、同時に振り返る。
(焚き火---
あったかいもの、飲もうとしてた。)
少女の方も何かを思い出したかのように目を見開いた。
「あ、いやすまない。完全に個人的なことだ。忘れてくれ。
いきなり刃を突き立てて申し訳なかった。気をつけて」
それじゃ、といい、少女は軽やかにジャンプして木の上にのった。
その背中はどこか、寂しいそうでなにかに堪えているように写った。
「まって。」
ルーチェは大声で呼び止める。
飛び移ろうとしたのか、姿勢をキープしたまま顔だけをルーチェの方を向ける。
「一人だと、効率悪い。私も手伝う。」
なにかしら思うところがあったルーチェは、放置できずに声をかけた。
少女は木の上から驚いたように目を見開く。
いきなり襲った相手から、そんな言葉が返ってくるとは思っていなかったのだろう。
困惑の色を浮かべながら、ルーチェを見つめ、一言確認するように口を開く。
「私は君を殺そうとしたのだぞ。それでもいいのか?」
ルーチェは静かに頷いた。
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