第16章 Z=15 魔導士の剣、科学の灯
ルーチェは自分のテントに戻ると、午後まで休みます、と貼り紙をしてテントの中で眠りについた。
連日の疲れや、精神的に安心したのか、目覚める頃には顔色はよかった。
(今日はよく寝れたし、スッキリしてる。作業のお手伝いやら、カルテの整理、しなきゃ。)
ルーチェが目覚めたのは太陽がてっぺんに来た頃。
いつも通りカルテの整理、医薬品や薬草の確認、などを終えると、千空達の科学王国チームに合流して、作業に混ざった。
ルーチェは簡単な加工やちょっとした魔導の細工などを行い、夕暮れ時には冷凍庫が完成した。
時折、怪我人が無茶をするのでストップかけたり、事故が起きそうになって魔導を使って止めたり、とハプニングがあったが、全てが落ち着く頃には夕方になっていた。
ルーチェはふと、歩き出してきた。
目指したのは、シーラの眠る墓標。
いや、もともとは千空の墓だったのだが、そこに母を埋めた。
夕暮れの空が朱色に染まる。そこはとても静かだった。
「母様、ただいま。聖剣は無事に手に入れたよ。」
そういいながら、聖剣のチャームを見せた。
ルーチェは、膝を折ってしゃがむと、ふと笑う。
「司さんも、無事コールドスリープできたって。助けることは出来なかったけど、未来に繋げることはできた、と思う。千空たちが科学で世界を救うなら、私は…」
聖剣のチャームをぎゅっと握り込む。
まるで、それが形見のように、いや、ルーチェからしたら形見そのものだった。
祈るように、強い気持ちを込めるように、そっと呟いた。
.