第2章 Z=2 来訪者A
「答えろ。あさぎりゲン。」
ドスの効いた低い声を出し、顔は無表情のまま、けど瞳にはたしかに殺す、という強い意思が込められていた。
杖をかまえ、呪文を唱えようとするルーチェをみてさすがに怖くなったのか、ちょ、たんま、たんま、と落ち着けという。
「本名は、ルーチェ、ちゃん、でいいのかな?ほんと、落ち着いてよぉ。俺はまだ決めかねてるんだし、ルーチェちゃんを殺そうなんて思ってないよぉ。」
だから杖を引っ込めて?、とヘラーっとした顔で見つめる。
千空も話を進めたかったのか、ルーチェの肩に手をぽんとおく。
ルーチェは、千空の赤い瞳が、一旦落ち着け、と訴えることに気付き、渋々スティックを引っ込める。
「クククッ、医者に、魔導士、ねぇ。どんだけ設定もってんだよ、ルーチェ。とりま、話は後でゆーっくり聞かせてもらおうか。」
「……」
ルーチェは千空に疑われてると察したのか、少し不快そうな目付きになる。
たしかに、魔導士、と言われれば誰でも警戒する。科学者なら、尚更だろう。
二人の世界に入って忘れられてると思ったゲンは、あのぉ、と呼び戻す。
「一応断っておくけど、ルーチェちゃんはさすがに仲間じゃないよ。といっても俺が言っても説得力ないか。」
「あぁ、残念ながら、といいてぇが、さっきのルーチェの反応はマジモンだ。じゃなきゃ、俺の手がこんなにベタベタになるわけがねぇ。ただな、俺は科学者だ。立証不可能な事象を怪しむのは当然だ。」
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