第15章 Z=14 完璧な医者と不完全な魔導士
「ルーチェ、おれはてめぇの命を犠牲にして救え、なんて一言もいってねぇ。それに延命には十分だ。あとは心臓の縫合をして、様子見るしかない。」
「な、なにいって……ここで閉じたら司さん、死んでしまう!そんなこと、医者としては見過ごせない。」
ルーチェは震えながら、千空にどなりつける。
千空ははぁ、とため息をつき、静かに告げた。
「ルーチェ、冷やすぞ。」
千空の発言にルーチェは目を丸くする。
「冷やす、って…どうやって……」
「コールドスリープだ。菌の活動を止める。体のダメージも最小限に収まる。今の医療と魔導でダメなら、未来に繋げる。今がダメでも、勤勉な医者が居れば未来に追いつく、そうだろ?ルーチェ。」
静かに語る千空の声に、ルーチェは目を伏せた。
命を冷凍する-----
今のところ成功例は聞いたことがないが、現在の医術や医学品では敗血症の根治は難しい、ルーチェもそれは分かりきっていた。
それに、ルーチェ自身も限界が来ていた。
(魔導でも医学でも届かない。それは分かりきっている----)
ルーチェは悔しさを目に込めながら、千空の方をみた。
千空もルーチェの悔しさを理解したのだろう、だまって頷いた。
「……わかった。」
ルーチェは静かに了承し、震える手で道具をにぎり、司の傷口や心部の再建を丁寧に行っていた。
全てが終わったあと、ルーチェは最後にスペクティアで体内を隅々まで確認し、バイタル確認を行った。
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