第15章 Z=14 完璧な医者と不完全な魔導士
------手術が開始した。
ルーチェは、迷うことなく司の体にメスを入れる。
その後は、新米とはいえ、スピードは早くいとも簡単に司の心臓付近へと到達した。
「----やはり、膿がひどい。これを全部取りきるのは…」
司の内部を見た千空も顔を顰めた。
それほどまでに司の体は限界を迎えていたのだ。
「……千空、魔導を使う。それでだめなら…」
「……わかった。」
千空の言葉にルーチェは力強く頷き、スティックに手をかけ、回復や癒しの呪文を繰り返し唱える。
しばらくすると、ある程度の膿は排除できたのか、体の中は綺麗なピンクの臓器へと戻った。
だが、完全では無い。ルーチェは何度も何度も魔導を使うが、それ以上良くなる兆しは見られなかった。
(お願い、なんとしてでも司さんを救いたいの。もう誰も失いたくない…)
ルーチェがもう一度、呪文を唱えようとした時だった。
「そこまでだ、ルーチェ。」
千空がルーチェに声をかける。
「へ?そこまでって、そこまでってどういうこと!?見捨てるの?」
「……落ち着け、ルーチェ。てめぇ、自分の状況分かってんのか?」
ルーチェは呆気にとられる。司さんの命が危ないときに自分の心配なぞお構い無しだ。
ルーチェは千空をきっと睨む。
「救える命、救わなくてどうする。ここで諦めたら……」
ルーチェが暴走して続けようとしたとき、千空ははぁとため息をついて言葉を続けた。
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