第15章 Z=14 完璧な医者と不完全な魔導士
「これでしばらくは大丈夫。私は千空のところに報告に行く。」
「わかったよ。千空たちは恐らく、隣の洞窟にいると思う。」
ルーチェは、わかった、とだけ返事をし、カルテを持って洞窟を後にした。
洞窟で薬品を作っているらしい、という情報を獲て、ルーチェは千空たちのもとへと向かう
千空たちの元につくと、千空が薬液の調合を進め、ゲンが軽快にサポートしていた。
「千空、ここにいたの。」
「おう、ルーチェか。司の様子はどうだった?」
千空とゲンが作業の手を止め、ルーチェへ視線を向ける。ルーチェは記録しておいた内容を見ながら静かに告げた。
「……患部の縫合に関しては問題は無い。けど、ひとつ心配なことがある。---敗血症の可能性がある。いまの技術では助かる可能性は低い。」
重い言葉に短い沈黙が流れた。
「……あ゛ー、それって魔導を使っても、助かる見込みは薄いってことか?」
「……回復魔導も絶対ではない。副作用を起こすかもしれない。それでもよければ、使うことを考える。」
それは医学に嘘をつかない医者として、限界を知っている魔導士としての言葉だった。
千空は一瞬、真剣な眼差しでルーチェを見つめ、そしていつものように喉を鳴らす。
「頼んだぜ、お医者サマ。必要なもんがあったらなんでも作ってやる。」
千空の言葉にルーチェはしずかにうなずいた。
(必ず、成功させる。なんとしてでも…)
ルーチェはひそかに拳を握りしめ、怪しげな薬を調合してる千空のことをただ見つめた。
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