第15章 Z=14 完璧な医者と不完全な魔導士
司が運ばれた場所に到着すると、羽京と大樹、もう1人、金髪の女性がそばに居た。
「……羽京さん、司さんの容態は?」
ルーチェが声をかけると、みんなの視線は入口に向く。ルーチェのことを知らない金髪の女性はルーチェの姿をみて、警戒するように身構える。
「あなた、あの人と同じ魔導士、なんでしょ?司さんにおかしな事をしようとするんじゃ。」
「……どなたか知らないけど、わたしは医者。変なことはしない。」
「「「医者?」」」
ルーチェがそう返すと、3人同時に聞き返す。
「おうよ。」と後ろからクロムが割り込んできた。
「ルーチェはルリの病気も直したんだぜ。あんときはたしか肺炎で、薬作んのも大変だった。けどよぉ、ルーチェが活躍してくれたお陰でルリは治ったんだぜ!」
誇らしげに胸たからかに語り出したクロムにルーチェは視線で辞めるように訴えてから、羽京たちの方に視線を戻した。
「医師免許は数千年前に置いてきて、ない。証明は出来ないけど、できる限りの事はする。私は医学に嘘はつかない。」
金髪の女性はいまだににらみつけたままだった。
が、大樹と羽京は顔を見合わせ、静かに頷いた。
「南、千空が呼んだんだよ。信じて任せよう。」
「でも、あの女は魔導でここを支配した。ノルマや役目を達成できない人には厳しく痛めつけてた。」
南の言葉に羽京と大樹は顔を曇らせる。シーラの言動を思い出したのだ。
その様子に、ルーチェとクロムが顔を見合わせ、戸惑っていると静かに大樹が2人の前にでてきた。
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