第15章 Z=14 完璧な医者と不完全な魔導士
ルーチェがテント周りに戻ると、なにやら人だかりができていた。
ルーチェは怪訝に思いながらも、その人だかりに声をかける。
「あ、ただいま、戻りました。」
「……どこに行ってたんですか?」
「爆発の音源が聞こえたところに…。怪我人はいませんでした。」
ルーチェがそう告げると、険しい顔つきだった司帝国の面々の表情が緩まった。いや、よくみれば、イシガミ村の面々、とくにルリが心配したような怒ったような目をしてた。
そういえば何も言わずに飛んで行った、と思い出し、少し苦笑いして何も言わずに言ってごめんなさい、とひと言謝ると、ルリが目の前までやってきた。
「ルーチェ、なにもなくて、よかった。」
「ルリ……。心配してくれたの?」
「当たり前じゃないですか!昼食の時間に呼びに行ったら誰もいない…どこに行ったか誰も知らないというので、心配して……」
「……ありがとう。」
ルリが泣きそうになりかがら抱きつくと、ルーチェもそれに答えるかのようによしよし、と抱き締め返し、ルリの頭をなでる。
「……嘘、あいつ、あんな表情もできるのか。」
「いつも、無表情にお大事に、としか言わねぇからてっきり義務だけなんだと…」
「……あいつも何だかんだ人間なんだな。」
ルリとルーチェのやりとりを見守っていた司帝国の面々は、ルーチェのことを本当の意味で見直し、ルーチェの評価が本当の意味で変わった。
ルーチェはそんなことなどお構い無しに、そっとルリの頭を撫で続けた。
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