第15章 Z=14 完璧な医者と不完全な魔導士
ルーチェは男の腕から包帯をそっと取り、傷口を丁寧みていく。
「…炎症は収まってる。痛みは我慢出来る?」
「あ、あぁ。なんとか。」
「なら、今日は薬塗って包帯の交換でおしまい。昨日も言ったけど、我慢できない痛みがしばらく続くようならすぐに来て。」
そう言いながら包帯を丁寧にまきなおす。
ルーチェの治療の手際の良さ、包帯を巻く時の丁寧な診察に関心を示す。
「はい、おしまい。お大事に。」
ルーチェの一言に、返事を返し、そっと立ち上がり、男は診療所を後にした。
男が去った後、ルーチェは冷めきった器を持って、スープを1口すする。
「……冷めてる。」
それでもスープを啜りながら、新しい紙に先程の患者の経過、症状、処置内容などなどを書いていく。
ルーチェがカルテを書き終え、スープを飲み終わったころを見計らい、今度は足の負傷をかかえた患者がやってきた。
その人にも丁寧に診察し、軽い問診、検査、処置を行い、お大事に、とみおくった。
「……丁寧に治療してくれるんだな。」
何人目かの患者を診察したときに、患者のひとりにそう言われた。
「当たり前のこと。」
ルーチェは、それが医者として当然、といわんばかりに返事するが、その顔は少し赤く染まっていた。
患者の往来もひと通りおちつき、カルテを書いていた頃だった。
ドカンッ
遠くの方で爆発の音が聞こえた。
ルーチェはいつもの如く、カバンに医薬品や衛生用品などを詰め、空へと飛び上がった。
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