第15章 Z=14 完璧な医者と不完全な魔導士
「ま、そういうことだ。医者としての”腕”は確かだ。しっかり見てもらえよ。」
それだけを言い残すと、千空は、解散だ、と言わんばかりに手をひらひらさせ、発掘チームを引き連れて出発していった。
一方残された司帝国の面々は互いに顔を見合わせ、どうするかと、目線で語っていた。
ルーチェの方も、治療しなければいけない、とわかってはいても、呆然と立ち尽くしていた。
(…治療をしてあげたいのはやまやまだけど...信頼されてないのに治療を申し出ても…)
ルーチェがどうしたものかと頭を悩ませていると、一人の男の人が近づいてきた。
「…あんた、どんな傷でも治せる、のか?」
ルーチェはその声に顔を上げ、話しかけてきた男の方を見る。
話しかけてきた男の腕には深い切り傷の上から包帯をぐるぐると巻かれていた。しかし、巻き方が甘いのか、隙間から変色した肌の色が見えた。
ルーチェは、失礼します、と一言声をかけて、腕に触れた。
「…化膿しかけています。消毒して、包帯の巻きなおし、それから、抗生物質の服用が必要。じゃないと、腕を切断することになるかもしれません。」
切断、その言葉に顔をゆがめる男。男は絞り出すような声で、懇願するように、声を発した。
「…切断…はいやだ。頼む、直してくれ。」
「…少し待ってて。治療道具を取ってくる。」
ルーチェはそう告げると自身のテントに道具を取りに向かい、すぐ戻ってきて、男の治療を始めた。
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