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幻想科学物語

第15章 Z=14 完璧な医者と不完全な魔導士





(…何人か、重傷を負っている人がいる。その人たちの手当てをしたら村に戻ろう…)


ルーチェが、前に出て、千空、と声をかけようとしたとき---


「ルーチェちゃんはねぇ、ゴイスーなーお医者さんなの。」


その声が、場の空気がやんわりと割った。


ルーチェが声の方、千空のに視線をやると、そこにはこの時代には珍しい紫色を基調とした着物をきた、朝霧ゲンが立っていた。


「実地経験もあって、サルファ剤作成の時の功労者。何より”命を助けたい”と本気で思っている。魔導とか、シーラちゃんとか関係ないよ。彼女は”命”を見捨てないよ。」


「ゲン…」


ルーチェがゲンの方を見ると、ゲンもルーチェに視線を送る。
彼の声は軽いものではあったが、その表情は真剣なものであった。


「ま、信じられないって気持ちもわかるよ。トラウマってもののは根が深いからね。でもさ、ルーチェちゃんとシーラちゃんと違うと思うよ。」


ざわめいていた雰囲気もゲンの一言でざわめきは落ち着いた。


そこへ千空の隣に立って行った司が口を開いた。
 

「いいか、みんな。今一番傷ついているのはルーチェだ。けど、自身の気持ちを抑えて俺の妹を救おうとしてれた。その気持ちだけでも、汲み取ってくれないか?」


その言葉で、最後までざわついていた司帝国の面々も静かになった。


ルーチェは、司と千空、ゲンの顔をそれぞれに見つめる。
三人とも、ルーチェの方を見て、ふと笑った。


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