第12章 Z=11 作戦会議
クロムは、でもよぉ、と言葉を続けようとしたが、ルーチェが制止した。
ルーチェもいつかは向き合わなければ行けない問題。
かつて、人助けのためとはいえ、性別を隠して神聖な試合に出たことは相手への敬意にかけていたことだ。
今この場で殴られても仕方の無いことだ。
覚悟が決まったのか、ルーチェもマグマの方を見る。
「あの時は事情があった。尊厳を傷つけるつもりはなかった。けど気が済まないというのなら、殴ってくれても構わない。」
ルーチェが誠意を込めて頭を下げて言うも、マグマは動く気配がなく、その場で固まったままだった。
マグマもまた負けた時のこと、その後の宴での出来事、これまでの事などを思い返していた。
「…マントルが、無理をして瀕死の怪我をした時があったな。俺は正直、あいつが死ぬかと思った。けど、そんときにお前は適切な処置を施してくれた。お陰であいつはたすかった。」
「あれは、医者として当然のことをしただけ。」
「御前試合の結果は正直納得いかねぇ。コハク以外の女に負けるっつうのは不名誉すぎる。だがな、お前のその医術とやらは認めてやるよ。だから、頭上げろ。」
そう言って右手を差し出すマグマ。
ルーチェは下げてた頭をあげ、恐る恐る自分の右手をだし、握手をかわした。
じっと見守ってた2人もその光景にほっとして安堵のため息をつく。
「あらためてよろしく。マグマ。」
「おうよ、ルーチェ。頑張ってついてこいよ?」
握手を交わす2人の顔はとてもいいもので、かつて争ったふたりとはおもえないほど、おだやかなものだった。
.