第11章 Z=10 それぞれの贈り物
ルーチェ自身は天才という訳ではなかった。
ただ、彼女は幼い頃から引っ込み思案で、友達も少なく、本が友達、そんな感じの少女だった。
つまり、義務教育でも、医学でも、魔導術、それらの秀才と言われたのはひとえに彼女が努力をしてきたからというものである。
そして、その過程で、学習能力が育った訳だが…
「すごいな、ルーチェ。ワシが銅板作り上げている間に、もう作り終わるとは。」
「なぁぁああぁ、ルーチェ、てめぇ、天才じゃねぇか。つい最近まで武力極振りだったくせに、よくここ前まで成長できたな、100億満点くれてやる。」
そう、コクヨウたちが手作業で銅を叩いている間に、ルーチェは軽々と1台、暖炉を完成させていた。
「別に…夜勉強した、それだけ。」
冒頭でも説明したとおり、彼女は天才ではない。ただひたすらに努力をした、それだけだ。
そういわんばかりに、ルーチェは少し疲れを感じたのか、珍しく息が上がっていた。
「あぁ、村のみんなのことは任せとけ。俺も多少なら医療知識あんからなぁ。てめぇはちぃと寝とけ。」
「ごめん…でも、なにかあったら呼んで。」
そう言うと、診療所の札を休診、と切りかえて、お湯を沸かし、コップに注ぐ。
お湯をゆっくり飲んでいると、途中スイカたち子供チームがお見舞いにと花を持ってきた。
ルーチェは、ただ疲れただけだよ、というと、今日は百物語を聞いて、と子供たちから百物語を1つずつゆっくり聞くルーチェだった。
.