第10章 Z=9 科学の光と叡智の陽
「あぁ、てめぇら、新年早々、仕事始め、だ。洞窟探検のための準備すんぞ…」
千空が意気揚々と村民に指示を出そうとした時、もうひとつ光り輝くものをみつけた。
その光はルーチェの胸元から輝いており、今度はみんなの視線がルーチェに向けられた。
ただ、ゲンはなにか心当たりがあったのか、ルーチェに問いかけた。
「ルーチェちゃん、それって…」
「うん。これは、母様から預かった、"鍵"。でもなんで、今光ってるの?」
ルーチェは恐る恐る、"鍵"のチャームに触れる。
とくに熱いとか冷たいとかそういった不快な感覚はなく、ただ温もりを感じた。
不思議に思いながらも首から取りだすと、いっそう輝きが増し、直視できないのか、腕で目をおおう。
「ルーチェ、それなにでできてるか、きいたことは?」
「これ、初めて見るの。母様からの届け物だって、ゲンから聞いた。これがなにかはわからない。」
「ッチ、せっかく問題が片付いたと思ったら別の問題か。ちょっとみせてみろ。」
そういって千空はルーチェのもつ"鍵"のチャームに触れようとする。
すると、今度は激しい炎が燃え上がった。
まるで、ルーチェ以外触れることを許さない、といわんばかりに。
『現世に生き残る最期の末裔よ。その血と"伝承の詩-ウタ-"を捧げよ。』
「おん?誰かしゃべったか?」
「いや、だれもなにも。そもそも詩はともかく、血を捧げよ、なんて物騒なことを思いつくのは、この村にいないと思うが。」
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