第9章 Z=8 現代科学の灯火
ルーチェが本当の意味で村民たちと打ち解けた日からさらに時は進み、厳しい冬の寒さがおとずれた。
その日も、ルーチェはいつもの通りに"祈り"を捧げては、"鍵"に変化がないことに落胆しつつも、いつもどおりの日常、けが人-おもにクラフトチーム-の手当てとお小言、それから簡単な防具類の調整や、子供たちやご隠居たちとの触れ合い、などを行ない過ごしていた。
そして、お昼すぎに、千空に呼ばれ、村から外れたところに2人で赴く。
「千空、話って?」
「あーまぁそのなんだ、今日はクリスマス、だ。で、てめぇに頼みたいことがある。」
ルーチェはごくりと唾を飲み込む。なぜなら改まって呼び出されては、過去に無理難題なことを頼まれた記憶が蘇ってきたからだ。
しかし、目の前の千空は顔を赤らめながら言葉を紡ぐ。
その言葉を聞いた時、ルーチェは、ぱぁと目を開かせた。
「できるか?ルーチェ。」
「がんばってみる。村民たちに喜んでもらいたし。」
「あぁ、そりゃよかった。ほんじゃ、たのむわ。魔導士サマ。」
ルーチェはうなずくと、走って診療所の方へもどっていく。
元気なルーチェの背中を千空はただ、やることが増えたなぁ、と嬉しそうに呟きながらみおくった。
診療所にもどったルーチェは診療所の札を休診にする。
そして、何やら、魔導をつかって、布や裁縫道具をカゴの中に入れて、森の中へと消えていった。
.