第9章 Z=8 現代科学の灯火
ルーチェは手で涙を拭いながら謝ると、ご隠居はうん?と首を傾げながら不思議そうな顔つきになる。
「なんで謝るんだい?」
「えっと、その…暗い雰囲気にさせちゃって……それに、あなた達にも気を使わせたから、その……」
ルーチェは、これまで楽しくおしゃべりしてたのに自分のせいで中断させてしまったこと、そして気を使わせてしまったことなどに対して罪悪感から謝罪した。
ご隠居は、ますます、分からない、と言った表情でルーチェをみつめる。
「なにをいってるんだい、ルーチェ。こういうときはね、気なんかつかわなくていいんだよ。」
そこで言葉をきると、え?と驚ろくルーチェの手をご隠居はあたたかい小さな手でそっと触れて、安心させるように撫でた。
「スイカからあんたの故郷でなにがあったのか、聞いたよ。最初はわしらもあんたのその知識と力を警戒していたさ。でもね、あんたはワシらの子供や孫を助けるためにその知識と力を使っててさ、ありがたいとは思ってたんだよ。」
「ご隠居殿…」
「それでも、あんたと話す機会なかったからさ、遠くから見ると完璧人間におもっちまってね。警戒してたさ。けど、根は心優しい娘なんだね。故郷のことはたしかに不幸だったと思うよ。けど、今はこの村のみんながあんたの家族みたいなもんさ。」
「家族…」
ご隠居はルーチェの呟きに満面の笑みで頷く。
ご隠居の言葉に、ルーチェはもう1人じゃないんだ、と心の中で認識すると顔を赤らめて、下をうつむいた。
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