第1章 Z=1 魔導士R
重かった気持ちが少しだけ気持ちが明るくなり、ふっ、と今度は笑いを漏らすルーチェ。
(コハク、クロム、スイカ。とても頼もしい。
千空は、復活者で現代の知識をもっている。少し不安だけど、まあいいか。)
ルーチェはかつて過ごした村の光景を思い出す。
最後に見たのは、思い出したくもない壮絶な光景だった。
(この子達の村を病気で滅ぼす訳には行かない。悲しい思いをさせたくない。)
奇跡に近いかもしれない。神にも近い所業かもしれない。
それでもコハクやクロム、スイカから笑顔を奪うようなことだけは避けたいと強くちかった。
その時、前を歩いていた千空が立ち止まり、ぽつりと言った。
「ついたぜ、ここが俺たちの拠点だ。」
千空の言葉を聞き、ルーチェは目を見開く。
目の前には少し広めのひろばと、小さい倉庫みたいなものがあるだけだった。
正直に言うと医療設備どころではない。
衛生環境も、まんぞくなものではなかぅた。
ルーチェは一瞬眉をひそめ、周囲をぐるりと見回した。
(……いや、無理ゲーでしょ…)
そう思いながら最後に千空、コハク、クロム、スイカの方を見る。
みんなルーチェを歓迎しているようだった。
(けど、このメンバーなら、もしかしたら、奇跡を起こせるかもしれない--)
そう思いながら、ルーチェは小さく息を整え、1歩、科学王国の拠点に足を踏み入れた。
「「「ようこそ、スイカ、ルーチェ。」」」
太陽の光が差し込む中、スイカとルーチェを歓迎する明るい声がひびいた。
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