第6章 Z=5 魔導騎士と科学王国民
「とりあえず、口の中をゆすぐ。深呼吸をして。」
ルリはヘマタイトの指示に従い、持ってこられた水で口の中をゆ過ぎ、ゆっくり深呼吸をする。
そして、落ち着たところに、ヘマタイトはルリの顎をつかんだ。
「口、大きくあけて、あーっていって。」
「あー」
ルリが口を開けたところに容赦なく指をつっこみ舌を抑え込む。
周りがその行動に唖然するが、ルーチェは構わず口の中を覗き込む。
ルリは何が起きたのか分からず、驚きのあまり声を出すことを辞める。
ルーチェは、ルリの耳元に近づき、そっと甘いテノールで囁く。
「ルリ、あと少し、あと少しだから。もう、少しだけ、声を出して欲しい。」
ルリは囁かれた声にビクッと肩を震わせ、赤面する。
そして、暗示にかかったかのように、再び声を出した。
(食道は切れてる様子はない。声帯も恐らく問題ない。けど弱々しい響きが目立つ。)
ルーチェは口の中から、指を引き抜き、反対の手でよく頑張った、と言わんばかりにルリの頭を撫でる。
ルリはその安心感と先程の緊張からぐっすりと眠りに落ち、ルーチェに寄りかかるように倒れ込んだ。
「コハク、安全な場所まで運んであげて。」
「あぁ、わかった。」
そう言うとコハクはルリを抱き抱え、先程の建物の中へと運んで行った。
そして、シャツを力任せに破り、手を拭きながらコクヨウと千空にこっちに来て欲しいと目線を送る。
二人共が来たところで口を開く。
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