第6章 Z=5 魔導騎士と科学王国民
ルーチェともう1人の女性は同時に駆け寄ったが、タッチの差でルーチェの方が素早く、脈をとる。
「あんた!巫女様から離れな。」
「人命かかってんのに、離れられるわけがない。」
黒髪の女の人にむかって睨みを聞かせ、低いテノールの声で周りを黙らせる。
ルーチェは脈拍をとり、咳き込むルリの喉奥を見る。
(一時的な興奮、か。脈拍が1分に対して早い。だがそれでも、耐えられないほどではないだろう。喉にも異常は見られない。咳き込みは単なる偶然?くっ、ここで魔導を使えたら…)
「おい、お医者サマ、お巫女サマの容態はどうだ?」
「一時的な興奮状態、ということしかわからない。とりあえず、担架かなにかで寝台まで運んだ方がいい。」
そう告げると黒髪の女性が急いで担架を持ってくるように指示をだし、直ぐに担架が用意される。
ルーチェは巫女を抱き抱え、担架にのせて、安静にしとけ、といって、千空の方に向かう。
「一応きくが、さっきの声は、あれ、だな。」
「さすがにな。私の声、女性にしか聞こえない、から。」
「ククッ、やる気いっぱいのお医者サマがいてお涙ちょちょぎれるぜ。ともかく、俺達もルリには聞きてぇことは山ほどある。御前試合、なんとしても優勝すんぞ。」
ルーチェはこくっと頷く。
そこへクロムとコハクが駆け寄ると、クロムは案の定、だれだ?という顔をしながらこちらに話しかけてきた。
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