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幻想科学物語

第5章 Z=4 ガスマスク+シールド>H2SO4






どれくらいの時間がたっただろうか。
この静けさの中、一人の呼吸音が聞こえた。


「その、危険度マックスエリアってルーチェの魔導とやらでどうにかできねぇのか?」


クロムの言葉にルーチェ以外のみんなはあ、と声を上げる。
そう、ルーチェ以外は。


「…確かにシールド、盾魔導といったものは存在する。
物理攻撃には有効。硫酸や自然の危害については不明。」


「ルーチェ、てめぇら魔導士、とやらの中に科学者はいなかったのか?」


「いない。」


こりゃ詰みだな、と千空は頭をぽりぽりと書き出す。


(結界みたいなもんで進めば、硫酸の領域に問題なく行って採集することが出来るのになぁ)


そして暫く沈黙が続くが、悩んでても仕方ない、非合理的だ、と判断した千空が口を開く。


「ルーチェがどうこういおうが、硫酸採集にはいく。
硫酸がなきゃ抗生物質はつくれねぇ。決定事項だ。」


「でも…。あなたが死ぬかもしれない。」


「あぁ、そうかもな。エラー=死だ。だがな、これがなきゃどのみち人類復興なんてできやしねぇ。硫酸は化学史上、あらゆる化学の根幹になってんだ。いつか誰かが腹ァ括って取りに行くしかねぇだろ。それが俺にってつぅ話だ。」


ルーチェは千空の力強い言葉に黙りこくる。
これ以上反論してもこの少年少女たちは納得しないだろう。失う恐怖に身体を少し震わせるも、千空の言葉を少しずつ受け入れた。


「…わかった。」


ルーチェの言葉にみんなは安堵した。



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