第5章 嫉妬
看護師さんが今からでもシャンプーしてもいいと言ったので、シャワー室に来た。
どうやら、シャンプーもタオルも自由に使っていいそうだ。
濡れても着替えられるように、看護師さんが新しい病衣を用意してくれたと言う。
歩けるようにはなったが身体に力を入れると痛む為、立ち上がる時や座る時は補助がないと激痛に耐えながら動くしかない。
浴室に椅子がある為、それに座る為に副隊長にしがみついた。
「めっちゃ聞こえんで。」
「え?」
「心拍数200くらいいっとるんちゃう?」
一気に顔が熱くなった。
200もいってたらやばいですよ…あなたのせいですからね…。
と、心の中で言い返す。
言葉にはできなかったので睨むと、何故か副隊長は揶揄うような笑顔ではなく、幸せそうに笑っていた。
どうして?
その後は揶揄われることもなくシャンプーをし終わった。
襟が濡れてしまったので病衣を着替えると、看護師さんはいなくなってしまった。
忙しいのに手伝ってくれたんだな…。
シャンプーだけだがさっぱりしてボーッとしていたら、突然風が吹いた。
「ちゃんと乾かさなあかんでー。」
副隊長がドライヤーをしてくれている。
「自分で出来ますよ。」
「嫌や、やらせんかい。」
腕を上げると少し痛いがドライヤーならまだ出来るだろうと手を伸ばしたが、嫌やとその手を躱され、髪を優しく撫でるように指で梳いて乾かしてくれる。
その気持ち良さに目を閉じると、僅かな笑い声が聞こえた。
気持ち良くて寝そうになっていたところでドライヤーの音が消え、優しく頭を撫でられた。
「終わったで。」
顔だけ振り向かせて見上げると、八重歯を見せて笑う愛しい人。
時々、怖くなるくらいに幸せだ。
どうか彼がこれからも大きな怪我なく、笑顔でみんなを守れますようにと願う。