第5章 嫉妬
夜になり、勤務を終えた宗四郎さんがまた来てくれた。
終えたと言っても、あの時の話をする為だし、常に私たちは怪獣出現に備えていなければならない。
彼は椅子に腰かけると、遅くなってすまんと謝った。
忙しいのは重々承知している。
私が大丈夫ですと答えると、すぐに何故命令を無視したのか、怪獣を庇ったのか聞かれた。
なにも答えられなかった。
全て、8号の正体を話さなければいけなくなるから。
「またか……亜白隊長になら言えるんか?」
呆れたように呟きそう言われたので、首を横に振る。
亜白隊長だと余計言えない…。
彼の顔を見ていられなくなり俯いてしまう。
「また誰か庇ってるんか?お前はいつも誰かを庇っとるな。」
私を襲おうとした先輩を庇い、口淫を強要した副隊長を庇った。
全部、宗四郎さんの為だった。
すぐに聞き出せるとは思ってないと言い、彼はこの話題を終わらせた。
「さて、宗四郎くんの時間やで!」
先程とは打って変わって明るく抑揚のある声でそう言うと、両腕を広げて笑顔を見せてくれる。
どうしよう…好きだ、どうしようもなく好きすぎて泣きそうになる。
「なんで泣きそうなってるんや?宗四郎くんが甘やかしたるから泣かんでー?」
なんだろう、このギャップ…。
こういうところ、誰にも見せたくない。私だけが知っていたい。
屈んで覗き込んでくる彼を抱きしめてキスをして、好きだと言いたい。
だけど、抱きしめるだけにしといた。
もし、気持ちを言葉にしてしまったらどうなるんだろう。
この名前のない関係も終わってしまうのだろうか。
ただの上司と部下になるのだろうか。
いや、部下でもなくなるのかな…たぶん除隊なるだろうし…。