第25章 とある一週間✿番外編
私とキコルちゃんに背を向けて訓練室を出ようとする彼に声をかける。
「少し話したいです。」
「なんや、質問でもあるんか?」
振り返ってくれた彼の手を握った。
「宗四郎さん…。」
「はぁ…僕は話したいことなんてあらへん。」
握った手を振り払って入り口に向かう。
どうして…少しくらい話してくれてもいいじゃないか。
「ばか…。」
「あ?元はと言えばお前が悪いんやろ。」
ボソッと出てしまった声を拾われてしまった。
めちゃくちゃ怒ってる…。
でも、私も感情的になって言い返してしまう。
「私は謝りました!どうして許してくれないんですか!?」
「謝ったって…あのメッセージか?それだけで謝った気ぃなってんちゃうぞ。もうええ、終わりや。」
昨日1日、彼を無視してしまい、夜にメッセージで謝ったのだが、さすがにそれだけでは許す気がないらしい。
直接謝りたくても、勤務中だったし私の話を全然聞いてくれそうもなかったから、こんなことになっているのだ。
出て行こうとする彼の腰にある刀を奪い取って、胸に抱えた。
この刀を私から取り返さないと彼はここから離れないだろう。
キコルちゃんもさすがにやばいと思ったのか、声をかけてくる。
彼の刀を奪ったということは、どうなるかわからない。
それでもちゃんと話したいのだ。
返せと私に手を伸ばし、手の平を上に向けている。
そこに置けということだろう。
涙を流しながら彼を見上げるが、彼は無表情のまま私を見つめるだけ…。
「ごめんなさい…。」
ただそれだけを呟き俯いた。
「どうでもええ。早く返しぃ。」
一度刀を強く握り、そのまま彼の手の上に置いた。
受け取ると彼はそのままいなくなってしまった。
私が悪いのはわかってる。
付き合ってもいないのに嫉妬して無視をするという愚行を働いた。
彼には副隊長という立場があるのに…。
キコルちゃんは何も聞かずにご飯を食べに行こうと、私を支えて立ち上がらせてくれた。