第5章 嫉妬
その時、部屋に誰かが入ってくる。
白衣を着ているので、先生だろう。
また、医療班の方たちにお世話になってしまっているのか。
怪我をしたのだからそりゃそうかと、自問自答をする。
問診が始まったが、頭が働かず、ぼんやりと聞きながらゆっくりと頷いたりすることしか出来なかった。
いくつか質問されたり手を握ったり開いたりするよう言われたりした。
一通り確認が終わったのか、何かあったら呼んでくださいと言い、退室していった。
声が出ないのは痰が絡んでいるからだと言われ、痛みに耐えながら咳払いをすると声は出るようになったが、声が掠れてしまっていて、喋るのが少し辛い。
彼の名を呼びながら袖を少し引っ張った。
近付いてくれた彼の頬を撫で、後頭部に手を伸ばし抱きつこうとしたが、身体に力が入らないし胸も痛いしで断念する。
「あんまり動かん方がええで。」
後頭部に触れた手を優しく握り離すと、しなければいけないことがあるからともういなくなってしまった。
引き止めることも出来ずに、彼が姿を消した扉をボーッと眺める。
そのまま少し見つめたあと、視線をまた天井に戻し模様をボーッと見つめる。