第21章 群発災害
太腿にある非常時用にぶら下げたナイフを手にし、後方に投げつけた。
先程とは別の怪獣が1体、背後に迫っていたのだ。
さすがに投げつけたナイフで仕留めることが出来なかったので、気付いた宗四郎が私の足を降ろし、真っ二つにする。
ありがとうと言ってまた私を抱え直すと、そのまま駆け出す。
もう、誰かの…泣き崩れる姿は見たくない。
あの日の母や妹の姿を思い出す。
宗四郎が足を止めると数体の怪獣がいた。
私が身体を起こしそのまま彼の腕から飛び出そうとすると彼は私の足の裏に手をつけて、彼の押す力と自身の踏み込む力で一気に怪獣に向かっていく。
返し討ちで1体を倒しながら振り返って斬撃を放ち、そのまままた別の怪獣に一瞬で近付き刀を振る。
すぐに駆け出し乱討ちで1体を倒し、最後の1体を返し討ちで宙で逆さになりながら倒して、宗四郎の隣に着地した。
「強すぎんか?有明でどないな訓練しとったんや…。」
「大怪獣が現れるかもしれない。10号を生み出したのがあいつならきっと…だから、宗四郎の隣で戦えるように、ずっと努力してきた。」
刀を納めながら前を見据えて、すぐに彼の方を向いて笑顔を見せる。
熱っぽさはもう感じない。
戦っていればきっといつも通り動ける。
抱えようとした彼にもう大丈夫と肩に手を添えて断り、先程から気になっていた顔にかかる髪を結び直す。
さっき宗四郎にぐちゃぐちゃにされたから…。
「ねぇねぇ宗四郎、髪、長いのと短いの、どっち好き
?」
「え?……あぁ、君ならどっちでも似合う思うけど……今のがええな。切ったら、君の一部がないなるやんか。例え髪でもそれがなくなるんは嫌ねんな。」
わかったと笑顔で返し、地面を蹴って駆け出す。
さっき耳を切られた時、後ろに纏めていなかったら切れていただろう。
今が好きという彼の為に、もうどこも失ったりしない。
髪一本でも切られてたまるか。
面積が少なくなった耳を押さえる。