第21章 群発災害
「朧抜き!」
納刀している時間はないので構えだけを取り、一気に地面を蹴る。
「ア"ッ…!うっ…つぅ…。」
左耳に腕の先があたり切れて、ボタボタと血が垂れた。
さすがに耳は痛すぎるって…よりにもよって、ノーガードなところを…。
止血しようと握ろうとしたが、痛すぎて無理だった。
え…これ…。
目の前に落ちているものに目を見開く。
ただの血の塊かと思ったがよく見ると、耳の上の部分だ。
「っ!う"あああっ!!いたいっ…ア"ア"ッ!!」
それを見た瞬間、余計に痛み出し、耳を押さえて声を上げ涙を流してしまう。
小此木さんが滑走路制圧と言っているが、痛みでそれどころではない。
「三浦補佐官バイタル異常!耳を欠損していると思われます!」
小此木さん、私のこと補佐官って言ってたっけ…ダメだ、痛みで何も考えられない。
「美影っ!!」
宗四郎が駆け寄ってきてくれて、蹲った私の背中を撫でてくれる。
ダメだ、このままでは離脱させられてしまう。
「だ、だい、じょうぶ…まだ、戦え、ますっ…!」
このくらいで泣いていたらダメだ。
耳が少しなくなっただけ、大丈夫。
腕や足がなくなったわけではないのだ、まだ戦えるんだ。
「あかん!!すぐ治療受けて来い!」
首を横に振って答えると、上官命令やぞ、と低い声で言われる。
「め、命令を…取り消して、ください…。」
「お前っ…なに言うとる!?」
耳から手を外し地面に手をついてゆっくり立ち上がる。
痛みが治まったわけではない、まだ死ぬ程痛い。
飛行場は制圧したはずだ、他のところへ行かなきゃ…。