第20章 結婚
「宗四郎…頭パンクしそう…。」
「ははっ、そうやな。結婚ってめちゃくちゃ大変や…。」
タクシーの中でそんな話しをしていると、運転手さんにおめでとうございますと声をかけられてしまった。
考えることが多すぎて、何をどう処理していけばいいかわからなくなってしまう。
途中でご飯を食べて帰ってきて、宗四郎はソファに座ってスマホを弄り出す。
「結納金っていくらがええんや…。」
結納金?
500…とボソッと聞こえ、彼を二度見してしまった。
あなた、そんなにお金があるのですか…。
500なんて渡されたらたまったもんじゃない。
「あの…あまり大きくならないようにしてもらえれば…。」
お返しの額を想像して卒倒しそうになった。
なんで?と聞かれたので、お返しが…と吃る。
「えー別に結納返しとかいらんし。」
これも話し合わなきゃいけないやつか…。
「あ、あのぉ…つかぬ事をお聞きしますが、貯金額と給料はいくらなんでしょうか…?もちろん、教えたくなければ…。」
「んー?これ見たらわかるやろ。」
通帳を渡されたのでペラペラと捲って見てみると、開いた口が塞がらなくなった。
あなた、一体何歳なんですか!?
防衛隊副隊長ってこんなもらえるの?
この指輪、200超えてるなんてことは…。
左薬指にはめられた指輪を見つめる。
私のこと以外にあまりお金を使っている感じはしないし、この家くらいだろうか。
「ほんまに言うてる?」
つい、彼の方言が移ってしまった。
「はははっ、なんや、移ってもうたん?」
貯金額を見れば、結納金500なんて易々と出せてしまいそうだ。
それにご実家だってあんなに大きかったのだ。
君は貯金出来てる?と聞かれるが、私の貯金額なんて彼から見れば微々たるものだろう。
一応、16歳からのアルバイトで貯金はしているが…。
少し…と言って通帳を返して、自分の通帳も渡す。
「んー…結婚式は全部僕が出すから心配せんで。」
気を使われてしまった。
これ以上彼とお金の話をしていても感覚が違いすぎるだろう。