第20章 結婚
宗四郎は私の身体を気遣ってか、タクシーを呼んでくれたので、すぐに来たタクシーに乗り込む。
「きついやろ、ほんまごめんな。」
「大丈夫だよ。」
微笑めば微笑み返してくれたので、その顔を見て先程の笑顔とは対称的だなと、行為中のことを思い出してしまい顔が熱くなる。
どしたん?と笑われたので、さっきのことは忘れてと窓の外の移り変わりゆく景色を眺めた。
実家についてタクシーを降りると、さっきのことってなんや?と意地悪く笑って聞かれる。
わかってて聞いてるじゃん…。
そんな風に笑っているし、わざわざタクシーから降りてから聞いてきたのだ。
母に会うと彼は遅くにすみませんと謝って、母はお国を守ってくれる方だものと笑って中に通してくれる。
「この度は結婚を許してくれてありがとうございます。それで…これに……あっ!」
彼は封筒にしまっていた婚姻届を出すと、一緒に浮気誓約書も出てきたので、焦ってそれを封筒の中に戻す。
一緒に入れたままだったと謝って笑って誤魔化した。
浮気のことは知られているけど。
だが、これは彼が浮気をした証拠だ。
あまり見られていい気はしないだろう。
母は笑いながら婚姻届を受け取り名前を書いてくれた。
「いつ出すの?」
「明日の午前に出そうと思って…。」
だから午前休にしていたのか。
ん?明日?
私の方を向き首を傾げる彼を見てから、母と顔を合わせた。
わかってて明日にしたの?と聞けば、なんのことやと言われる。
「私の誕生日だよ!知らなかったの?」
「え、そやったっけ?ごめん、明日なんかしよか!」
酷い!と怒れば、許してやあと申し訳なさそうに眉を下げた。
副隊長の彼なら私の資料を見て知っているはずだ。
忘れていたことにムカついたので、もうっ!と少し頬を膨らませてから、すぐに結婚の話に戻る。
結婚式はするのか聞かれ、もちろんしますと彼は返した。
「しますが、まだいつになるか…いろいろ問題が残っていて…それが解決したら、子供も…と思っています。」
「不貞行為のこと?」
母の直球な言葉に慌てて否定した。
彼は怪獣9号のことだと言葉を詰まらせる。
一般人に話していいことではない。
不安にさせてはいけない。
母もそれをわかっているのが、深くは聞いてこなかった。