第19章 偽り
母に連絡すると言ってかけて結婚のことを話すと、案の定反対された。
すると彼は、僕が説得すると言ってスマホを奪う。
本当は直接話したいんだろうな…でも今は無理だから、一度連絡をしといて、後で証人の欄を埋めてもらうしかない。
彼は何度も謝りお願いしている。
なかなか、母の許可が出ないのだろう。
「宗四郎、好き…。」
「ちょ、美影っ?」
母と話す彼に抱きついて肩に顔を擦り寄せ、胸も腕に押し付ける。
小声であかんと腕を離そうとしているが、そんなに力は入っていない。
「好き…ずっと傍にいて…大好き。」
母にちょっと待っててくださいと断りを入れ、スマホを耳から離し、今はあかんてと少し頬を赤く染めている。
「照れてまうから、今はやめてや…。」
まだ照れてるの?可愛い。
私の声も母に聞こえているというが、わざと聞こえるように言っているのだ。
私はこの人を愛してるから、この人しかいないから、許してくれ、と…。
スマホを耳にあてさせ、続けてと言った。
彼は渋々了承して、母の説得に戻る。
「愛してる。もう誰のことも見ないで、私だけを見て…宗四郎の隣にいることが、私の一番の幸せなの。好き、好き…本当に大好きだよ、宗四郎…。」
スリスリと身体を擦り寄せて、何度も何度も愛の言葉を囁く。
やりすぎな気もしたが、彼の顔を見てると止められなかった。
全部、私の本当の気持ちだから。
赤くなっていく彼の顔を見て嬉しくなり、その後も何度も好きと囁いた。
「あ、あの、なので…美影さんと結婚させて、もらえないでしょうか?…っ!何度も怒らせて泣かせてしまいましたが、それでも離れたくないんです。ひっ…これからは泣く暇もないくらい笑わせると誓います。」
耳元で好きと囁いてみたり、指を絡めて握って手の甲にキスしてみたりしていると、その度に彼が反応して愛おしく思う。
突然彼はありがとうございます!と嬉しそうに喋った。
もしかして…。
彼はスマホを私に差し出してきて、母が代われと言っていると言う。
スマホを受け取り耳にあてた。
「さっきからなにしてるのよ…こっちが恥ずかしくなるわ…。」
「へへっ、私の気持ちわかった?」
わかったからもう寝ると言われたので、おやすみと言って電話を切った。