第19章 偽り
これ…とずっと手に握っていたものを差し出す。
それを確認すると彼は目を見開いて、ええの?と聞いてくる。
私のものだってもらったのだから、私の好きなようにさせてもらう。
それにもうこれは、彼のものだ。
宗四郎はソレを受け取って、元々あった親指にはめた。
「ねぇ、私は?私にはくれないの?」
左手を彼の前に翳すと、急いでテーブルの上にあるリングケースを取って、丁寧に薬指にはめてくれた。
「大好き…初めてこんなに好きになった。きっともう…宗四郎以上に愛せる人なんていない。」
私にはあなたしかいないのと彼の目を見つめると、目を開いて見つめ返してくれる。
僕もやと笑った。
すると彼は立ち上がり、紙とペンを持ってきた。
浮気誓約書を書いてくれと言われた。
どんなことを書けばいいかわからないので、調べながら書いて、それを彼に渡す。
彼は署名して印鑑を押した。
「絶対別れたないから、もう他の女に手ぇ出したりせぇへん。」
誓約書を私に渡して、もう一つ書いて欲しいものがあると紙を渡してきた。
「婚姻届…?」
すでに彼の名前は書かれている。
「それな、君と付き合い始めてすぐ書いたねん。絶対結婚する決めとったからな……もし、今すぐ書きたなかったら、いつでもええから…いつか書いてくれへん?」
私は今すぐにでも書きたいが、今回のことを家族に言ってしまった。
許してくれるとは思えない。