第19章 偽り
大好き、離れたくない。
どうして嫌いになれないんだろう…もういいと思ったはずなのに…。
今どこにいるのか聞くと、これから電車に乗ってそっちに行くと言う。
まだ彼の家の最寄り駅だろうか。
「いいよ、乗らなくて。待ってて。」
妹にお姉ちゃん!?と怒鳴られたが、彼に今から戻ると言って電話を切った。
結局、私は許してしまうんだ。
だって、どうしても嫌いになれないんだもん、大好きなんだもん。
2人に戻って来ないと思うからと言って荷物を持つ。
ありがとうと言って家を出た。
もしまた裏切られたらどうしよう…嘘をつからたらどうしよう…。
それでも、全部飲み込んで我慢しよう。
私はただ…あなたの隣にいたい。
本当はこんな風に許しちゃいけないんだろうけど、こんな風に思っちゃいけないんだろうけど…あなたの隣にいれるなら……。
気持ちも涙も本音も全部飲み込んで、あなたの隣で笑っていよう。
あなたの大好きな"単純なやつ"を演じて…。
彼の家の最寄り駅につくとすぐに駆け寄ってくれて、手を握ってくれる。
「どこで話したい?僕の家が嫌なら、人がいるとこ行こか?こんな時間だから、そんないないかもしれんけど…。」
電車は終電、どこかに行っても帰るにはタクシーか歩きになる。
「ううん、宗四郎の家がいい。」
彼は一度目を見開くと、やっと名前呼んでくれたと嬉しそうに笑った。
家についてソファに座ると、くっついてもええ?と聞いてくるので、自らくっついた。
彼は私の頭を引き寄せて自身の頭をくっつけてくる。
「嘘はついたけど、それだけやよ?今まで君に言ってきた言葉の中に、それ以外に嘘なんて一つもあらへん。」
ただうんと頷くと彼はそのまま続ける。
「大好きやから……初めてだ言うた方が、君の嬉しそうな笑顔が見れる思った。でも、そないなことで嘘つくなんて、ほんまにアホなことした。ごめん、なさい…。」
ずっと一緒におりたいと抱きしめてきた。
もう絶対離さないというように、きつく、きつく…。