第19章 偽り
「ごめん、あの人と付き合っとった…。」
「ははっ、あはは……バイバイ。」
今まで気付かなかった自分に笑えてくる。
彼が必死に謝って引き止めてくる。
そんな彼に怒りが頂点に達した。
「自分で浮気して嘘ついて、許されると思ってるの!?嘘をついたことに関しては、自分から言って来たら許そうと思ってた!でも、あなたは何も言わなかったじゃない!!…お父さんの指輪返して!信じてあなたに託したのにっ!!」
親指にはめられた指輪を奪って、腕を掴む彼の手を思いっきり振り払って外に出た。
走ってエレベーターに乗りマンションを出て街中を走っていく。
「もう終わり…本当に…本当に大好きだった…!」
結婚する前に知れてよかった。
彼があんな人だって…。
電車に乗り込んで実家に向かう。
実家についてインターホンを押した。
こんな時間に帰ってきちゃったけど、許してくれるよね?
すぐに出てきた母の姿を見て、安心して涙が溢れてきて抱きついた。
「お母さんっ…私もう誰も好きにならない!結婚もしない!うっ、うぅ…こんな思いするくらいなら、お母さんと美陽とだけ生きていくっ!!うあっ…あぁ…。」
母は驚いているがそのまま私を支えて中に入り、ソファに座らせて背中を擦ってくれて、私が落ち着くまで何も聞かないでいてくれる。
妹も部屋から出てきて、何があったのと呟いているが、母がもう少し待ってなさいと言うように、目配せをした。
落ち着いてきたので何があったのか全て話し、父の結婚指輪をテーブルの上に置く。
みんなはこういうことがあったら許しているのだろうか。
私は心が狭いのだろうか。
でも、到底許せそうにない。
なんであんな嘘をついていたのかもわからない。
「結婚する前でよかったわ。まさか、あの副隊長さんがそんなことをするなんて…とてもいい人だと思っていたのに…。」
母は私の背中を擦りながら微笑んでくれる。
妹はありえない!別れて正解!と怒りを露わにしている。
私の為にそんな風に怒ってくれるんだ…。