第18章 須臾
なんか…面倒臭い。
そう言いたいのは私なのに、何故あなたがそんなことを言うの?
「頭が痛いから薬飲んでただけです。離してください。というか…押し付けないでください。」
イラッとして少しきつく返してしまった。
「怒らんでや…押し付けてんはほんまごめん、無意識やった。」
私の頭を優しく撫でてもう少し寝ようと手を引く。
私をベッドに寝かせると顔を近付けてくるので、何をするのだと睨むように見上げた。
「口にはせぇへんから許してや……目ぇ腫れてもうてる。やっぱあれだけやとあかんかったか…。」
睨んでも唇が目に迫ってくるので反射的に目を瞑ると、瞼にキスをされる。
微笑むとちょっと待っててなとどこかに行ってしまった。
離れたくないって言ってたくせにどこに行くの…。
私も相当面倒臭いなと思った。
そういえば、あれだけ…って、何かしてくれたんだろうか。
すぐに戻ってきた彼は、濡れたタオルを2枚と化粧水や保湿クリームを手にしていた。
「痛ない?めっちゃ赤なってもうてる。」
目の下を親指で優しく触れて撫でる。
確かに目の周りがヒリヒリして痛い。
温かいタオルと冷たいタオルを交互につけて、どのくらいかそれを繰り返すと、化粧水を手にした。
「僕のやけど、ええ?」
特にそこまでの拘りはないのでコクっと頷くと、化粧水をつけて保湿クリームを塗っていく。
今すぐ抱きついてキスをしたい。
でも、自分でしないと言ったのだ、出来るわけがない。
どんなに彼が他の人と身体を重ねようと、気持ちだけは私にあると自惚れている。
その自惚れが私を甘くする。