第18章 須臾
彼の肩ら辺の服を引っ張って、こっちきてと呟く。
すると彼は一度私から離れて、ソファの背もたれを飛び越えて私の隣に座った。
なんか既視感がある座り方をされて、少し吹いてしまった。
なんで笑うてんの?と腕を広げて私を包み込む。
腕の中で私は声を上げて泣く。
もうたくさん泣いたはずなのに、なんでまだ出てくるの…。
そのままどのくらいか泣いて落ち着いてくると、彼は少し間に隙間を開けて、私の顔を見てくる。
グッと顎を持たれて上を向かせられた。
なに?と睨む。
「ん?目ぇ、腫れてまいそうやな思て…。」
「誰のせいだと…あ、ごめん、鼻水ついたかも。」
「僕やね…ええよ、いっぱいつけたれ。」
つけられるのは自分なのに…。
ティッシュと呟いてテーブルの上にあるソレを取ろうと腕を伸ばすと彼が取ってくれて、数枚を私の鼻に押し付けた。
鼻をかむとそのティッシュをゴミ箱に投げ入れて、またティッシュを取り涙を拭いていく。
こんなに泣いて縋って、面倒臭いと思われていないだろうか。
泣いてばかりでうざいと思われていないだろうか。
自分の行動全部が大丈夫なのか不安になる。
「うぅ…きらわないでぇ…。」
「え?今度はなにぃ?それは僕のセリフなんやけど…。」
ダメだ、全部が不安になって嫌われたくなくて…少しそのことを考えると涙が溢れてくる。
好きだと愛してると可愛いと何度も囁いてくれる。
その言葉が嬉しくて余計涙が流れた。
「つかれたぁ…うぅ、なくのつかれたぁ…。」
「えぇ?疲れたんかあ、僕が泣き止ましたろか?」
さっきまでは彼があんなに子供みたいだったのに、今度は私がそうなってしまう。
彼の言葉にコクコクと頷くと、脇腹を擽られて笑い出した。
敏感やからめっちゃ擽ったいやろと笑う。
耐えられなくて後ろに倒れて逃げたが、私の足の間に入りずっと擽ってくる。
彼の腰に足を巻き付けて押さえようとしたけど意味がなかった。
そのまま擽られていると、泣き疲れたのか微睡んで、意識が落ちていった。