第18章 須臾
「嫌なとこなんてあらへんよ。全部好きや言うたやん。今回のことは全部僕が悪いから、君はそないなこと思わんでええ。」
浮気した人が何を…。
後ろから抱きつかれて驚いたがあまり反応は見せずに、ボーッとスマホを眺める。
「そないなもん調べんで、全部僕にぶつけたらええ。」
スマホの画面を手で覆われて電源を消される。
諦めてスマホを横に置き俯く。
「ばか。」
「うん、そうやな、僕はバカや。」
顔を肩に擦り寄せてくる。
「好きな人としかキスしないって言った。」
「うん、言うたな。ごめん。」
声のトーンが下がり、表情は伺えないが後悔しているようだ。
「私に向けるような目してたっ!口でされて嬉しそうにしてたっ!うっ…すぐイってた!うぅ…あの人に、されるのっ、んぐっ…好きって、言っ、てたっ…!うっんっ、ばかばかっ!うぅ、もう、泣きたくないぃ…ぐっ、んうぅ…。」
「うん、ほんまにごめん。あないなことしてごめん。泣かせてごめん。」
抑えられなくなり、声を上げて泣いてしまう。
彼はそんな私をただギュッと抱きしめたまま謝る。
「きらいって、言ったのっ…んっ、うそだからぁ、あうぅ…。」
ダメだ、こんな風に泣いては好きだから保留にしたのをバレてしまう。
私は自分から離れられないんだとわかってしまう。
また浮気しても大丈夫だと思われてしまう。
彼の頭を掴んで頬を擦り寄せる。
「すきっ…っ、すきだからっ、ぅぐっ…ゆるせ、ないっ!」
「うん、許さんくていいよ。だけど、ずっと僕のこと好きでおって。もう、これ以上、後悔させへんから…美影がいっちゃん好き。僕が愛しとるんは美影だけやよ。」
絆される…この人は私がどれだけ自分のことを好きか知っているから、甘い言葉で私を解していく。