第18章 須臾
落ち着いてきたので彼の元へ行くと、あの女性がいた。
その女性はすぐに私に謝り、部屋を出て行く。
長谷川副隊長も出て行って、2人っきりになってしまった。
「言い訳をするつもりはない。彼女は昔遊んどった人や。久しぶりに会うて、その時のこと思い出して、興奮した。ほんまにすまんかった。」
私を真っ直ぐ見つめながら、落ち着いて話している。
そんなことを言われても、許せるはずがないでしょう?
キスまでして…好きだからしたんじゃないの?
泣きそうになってしまうので、眉間にグッと力を入れて我慢する。
私が何も言わずに見つめていると、突然床に正座をして額を床に擦り付けた。
「許さんくてええ、ただ…これからも君と一緒におりたい。」
何をバカなことを言っているのだ。
許さないということは、もうあなたとは一緒にいないことを意味する。
顔を上げて欲しいと言うと、すぐに顔を上げて私を見つめてくる。
「私たちはもう終わりです。あなたとの未来を想像出来なくなりました。」
「…嫌や、僕は君がいないとダメなんや…僕が愛しとるのは美影だけや……美影しかいらん。ほんまにもう、君以外とはあんなことせぇへんから…僕の隣におって…。」
首を横に振ると、お腹に抱きついてきて、嫌やと子供のように駄々をこねる。
突き放さないといけないのに…どうしても突き放すことが出来ない。
あなたを好きな気持ちを失くすことが出来ない。
私はずっと、あの日のあなたに囚われている。
「バレないとでも思ったんですか?バレなければいいと思ったんですか?」
「ちゃう!!そないなこと思ってへん!ダメやと思った!君を裏切ったらダメやと思った!僕はいつも君のことしか考えてへん!!」
私のことしか考えていないのにあの人を抱こうとしたの?
グリグリと顔をお腹に擦り付けてきて、本当に子供のようだ。
頼むから捨てへんで、と弱々しく呟いて涙を零す。
泣きたいのは私なんですが…。