第18章 須臾
「宗四郎…。」
「長谷川サン、美影に会わせてください。」
まだダメだと隣に座る彼が答える。
なんでみんなして止める?僕と美影のことやろ?
あれを美影に見られているとは思っていなかった。
あの人は過去に遊んでいた、唯一の防衛隊員だ。
お互い特別な感情はなく、ただ熱を発散させる為に身体を重ねていた、数あるうちの1人。
宗くんと呼ばれるのはあまり好きではないが、どうでもいいので特に何かを言ったりはしていない。
誘われて興奮したからキスをしてフェラをしてもらった。
キスはしたかったわけじゃなかったが、求められたのでした。
わかってた、してはいけないと。
美影を裏切ってはいけないと。
ただ、その時の欲望に任せてしまった。
過去にセックスしたことがある相手だから、つい身体が反応してまった。
美影のことが好きやのに…。
俯きながら、返された指輪と封筒を見つめる。
誰か部屋に入ってきたので顔を上げると、先程、僕の精子を飲んだ女性だ。
「さっきの子は恋人?」
「婚約者…。」
女性は溜め息をついて頭を抱えた。
「そんな子がいるのに、なんで私の誘いに乗ったのよ。」
欲に負けてしまったからだ。
美影が僕から離れていくなら、もう何もかもどうでもいい。
目頭が熱くなってくる。僕に泣く資格なんてないのに。
「美影に会わせてくれや…美影に会いたい……あの子がいんと僕は生きていかれへん…。」
そんなに好きなくせにバカじゃないのと僕を罵倒する。
お前だって同罪やないか。
ちゃうか、婚約者がいること知らんかったのやから。
その時また扉が開く。
もうええ、誰も来んでくれ…僕が求めるんは美影だけや。
「副隊長…。」
愛しい声が聞こえてすぐに顔を上げた。
泣き腫らした顔をした彼女がそこにいる。
僕がそんな顔をさせた。絶対にさせたくなかった顔。
こんな風に彼女を泣かせたくなかった。
すぐに抱きつきたかったが抑えて、美影とただ彼女の名前を呼び、顔を見つめる。