第18章 須臾
「少し話したいことがあるので来てもらえますか。」
答えも聞かず腕を掴んで引っ張り、誰もいないところに連れてきた。
こないなとこ連れてきてなにするん?と笑っている。
バカみたい。
前はこの笑顔に照れていたっけ。
まだ訓練を続けている隊員の音がする。
さっきいた場所からそんなに離れていないので、誰かに見られてしまうかもしれないが、どうでもいいやと思い鞄の中からリングケースと封筒を取り出す。
「これ、返します。」
そう言って彼に渡した。
彼は中身を確認するとそのままソレを見つめる。
「どいうことや。ちゃんと説明せえ。」
瞳を開いて私を睨んできた。
自分が何をしたかわかっていないのか?私が知らないと思っているのか?
「宗くん…そう呼ばれてましたね。」
冷静に話しているつもりだが、私は結構怒っているらしい。
先程からずっと敬語になっている。
目を見開く彼を一瞥し、視線を地面に移す。
「嫌や…僕が好きなんは君だけや。」
「は?それをどう信じろと?裏切ったのはそっちじゃないですか…っ…。」
彼の前では絶対に泣かないと決めたのに、目頭が暑くなって視界が歪む。