第18章 須臾
深呼吸をして個室から出て鏡に写った自分を見た。
「もう、目真っ赤じゃん…。」
ずっと泣いていたからか目が赤くなり、ゴシゴシと擦ったせいか、余計赤く見える。
確か、色付きの伊達メガネがあったはず…。
鞄の中をゴソゴソ漁り、ソレを引っ張り出した。
これで少しは隠せるよね?
演習場にこれをつけていくのは気が引けるけど…。
もう一度自分の姿を確認しトイレを出て電車に乗った。
第二台場に近付くにつれて、心臓がバクバクと動き出す。
大丈夫だよね、ちゃんと言えるよね…?
第二台場につくと、そろそろ訓練が終わる頃だった。
日比野先輩と訓練をする彼を見つける。
日比野先輩にほな終わりやと言って使っていたものを先輩に預けた。
機嫌よさそ…心無しか笑っているように見える。
この後のことを想像して?
あの人とするのが楽しみなの?
すると、彼は私に気付いたようで、目が合った…と思う。
ズカズカと私の方に向かってくる。
私の前まで来ると、目が合っていないので、どこを見ているのか気になった。
瞳が見えないのでわからない…。
「っ!いた…!なにす…。」
「この傷、付けたんは誰や?」
昨日、鳴海隊長の攻撃を躱せず頬が切れてしまったので、絆創膏を貼っていたのだ。
ソレをいきなり剥ぎ取られた。
そんなこと、どうでもいいじゃないか。
傷なんて、この仕事をしていればいくらでも付く。
鳴海隊長との訓練で躱せなかったと呟けば、傷口に口付けられぢゅっぢゅっと吸われる。
何をしているのだ。
まだ血が出ていたらどうする。
みんなに見られてる!
無理やり引き剥がすと、ちゅぱっと音をたてて唇が離れた。
痛い…染みる。
頬を手で押さえて彼を睨む。