第13章 指輪
「宗四郎さん、渡したいものがあるの。」
そう言って立ち上がり鞄の中を漁る。
小さい巾着袋のようなものを取り出し、また彼のところへ戻る。
「これ、お父さんの形見なの。結婚指輪。」
私が持っていてもいいと母に渡された。
もちろん、彼に渡すことの許可ももらっている。
すでに私のものだから好きにしていいと。
大切な人の大切なものを、今一番大切な人に持っていてもらいたい。
「え、ええの?大切なもんやろ?」
「あなたに持っていてもらいたい。もし、どこかの指にはめるなら、サイズを調整してもらうから。」
差し出すと彼が受け取ったので、ありがとうと笑った。
すると彼は、右手の親指に指輪をはめた。
「ぴったりや。」
「え?それ、お父さんが薬指につけてたやつだよ?」
確かに身長や体型は宗四郎さんより大きかったけど…。
そんなに違うものなのか…。
宗四郎さんはお礼を言い、絶対に大切にすると誓ってくれた。