第10章 第1部隊
キコルちゃんとその様子を黙って眺めていたら、長谷川副隊長が隊員に部屋の掃除を命じ、鳴海隊長の首根っこを掴んで私たちの前に晒す。
「ほーう、君が噂の功さんの娘か。」
首根っこを掴まれた状態で足を組み、頬杖をついた。
キコルちゃんがすぐに敬礼をして挨拶をする。
どうやら、私には興味がないようだ。
この人のことだから、資料もほとんど見ていないのだろう。
「君は…あのオカッパと同じ刀を使う子か。」
少しは資料を見たらしい。
名前を見て何も思わなかったのか?それとも、もう忘れた?
私もすぐに敬礼をして挨拶をした。
興味がなさそうに、聞いているのか聞いていないのかわからない。
「……弦お兄ちゃん…。」
「っ!?……美影なのか…?」
興味がなさそうに無表情だった顔はすぐに私と目を合わせ、まじまじと私を見つめながら瞳を輝かせている。
どうして、そんなキラキラさせているのか…。
私がニコッと微笑めば、首根っこを掴んでいる長谷川副隊長の手から逃れ、ガバッと抱きついてきた。
「随分といい女になったから気付かなかったぞ!」
驚きすぎて固まってしまっていたが、宗四郎さんの言葉を思い出し、引き剥がしにかかる。
全然離れない…。
長谷川副隊長がハッと我に返ったように鳴海隊長を引き剥がしてくれた。
静かになった鳴海隊長は私たちの方に向き直り、少し真剣な表情になる。
「第1部隊の隊長としてボクから君たちに望むものは一つだけだ。」
その一つとはなんのか聞こうとした時、ジリリリとけたたましい警報音が鳴り響いた。
怪獣が現れたのだ。
鳴海隊長はちょうどいいから僕らの戦いからそれがなんのか学ぶといいと言った。
「特等席での見学を許可しよう。」
首だけを振り向かせて流し目を見せる鳴海隊長に、相変わらず顔がいいと、今考えるべきではないことを考えてしまう。