第9章 決断
「美影、起きぃ。朝やで。」
カーテンを開けられたことで朝の陽の光が差し込み、眩しくて布団を頭まで被る。
そのままそうしていると、布団を剥ぎ取られそうになったので必死で掴んだ。
なんでか今日はすごく眠い。
「なんや、今日はお寝坊さんかいな。」
必死に掴んでいた布団がいとも簡単に取られてしまう。
「やぁだぁ…。」
「そんな可愛く甘えてもあかんでー。大事な先輩が行ってまうでー。ええんか?」
陽の光を遮るように腕で目元を隠すとそんな風に言われたので、起き上がりボーッとしたまま起きると呟いた。
「なんや、妬いてまうねんけど…おはようさん。」
ちゅっと音をたてて軽く触れた唇が離れてから、笑う彼を見ながらコクリと頷くと、おはようって返してくれへんのかと言われたのでおはよぉとなんとも情けない声を出した。
膝立ちになり手を伸ばせば少し屈んでくれる彼の頬をそっと撫でてから、髪に指を通すと少し濡れているので、すでにシャワーを浴びたようだ。
ジャージの襟から覗く包帯はどうしたのか聞くと、自分で巻いたようだ。
なんて器用な…。
私はシャワーを浴びるのか聞かれたが、そろそろ時間が危ないので浴びないことにした。
髪だけちゃんと直しときと言われたので、洗面台まで行き鏡を見てみると、見事に寝癖がついていた。
これ見られたの…恥ずかしい…。
寝癖を直し顔を洗って、宗四郎さんに声をかけてからマウスウオッシュを使用させてもらう。
すっきりして戻ると、両手を頬に添えられそのまま上を向かせられれば、目が合い唇が触れる。
舌が入ってきて絡まり、私の口内を少し堪能するとすぐに唇は離れた。
「今日も可愛ええな…好きや。」
額を合わせて至近距離で見つめられててそう言われれば、私も無意識で好きと返してしまう。
無意識と言っても、常に彼が好きだと私の心は叫んでいるが。
甘い雰囲気を振り払うように彼は私の手を引き、ご飯を食べに行こうと部屋を出る。