第6章 慰労会
彼は飛んでいった刀を取りに行くことなく私に近付いてくる。
目の前に来ると私の頭の上に手を置き、ガシガシと撫でた。
戦闘で乱れた髪がもっと乱れ、パラパラと視界に入ってくる。
「手加減してや言うたんに…ほんま、君を選んでよかったわ。」
私を選んでよかった?なんのことだろう?
副隊長を見つめると、笑ったまま私に背を向け、刀を取りに行く。
呆けていると、いつの間にか刀を鞘に戻した副隊長が目の前に戻ってきて、顔にかかった髪を耳にかけた。
そして、もし…と前置きをして話し始める。
「僕と一般市民が人質に取られとって、どちらか一方しか助けられへんとしたら、どっち選ぶ?」
いきなりなんの話をしているんだろう。
そんなの……私は防衛隊員なのだから一般市民を選ぶだろう。
でももし…ただ一人の女として生きられるのならば……。
「一般市民を選びます。私たちはその人たちを守る為に戦っているのですから。」
「僕、死ぬんねんで?」
「はい。それでも一般市民を選ぶでしょう。……ですが、その時私が防衛隊員でなければ、迷わずあなたを選びます。」
少しの間じっと見つめられ、私も同じように返していると、ええ答えやと突然ニコっと笑った。
何を確かめたかったのだろう。
手を差し出されたので、その手を握るとぐっと引っ張られ立ち上がる。
今は考えるのをやめて、残りの訓練に専念した。