第9章 少年は剣を取る(DMC4本編直前まで)
玄関の扉が小さく叩かれる音がした。
「はーい!」
ビアンカが扉を開けると、そこには二人の子供が立っていた。
ひとりは、淡い茶色の髪を持つ少女。
清楚な雰囲気を纏いながらも、どこか人懐っこい笑顔を浮かべている。
「こんにちは、ビアンカさん!」
「こんにちは、キリエ。今日もネロと遊びに来たの?」
「はいっ!」
元気よく頷くキリエの後ろには、もうひとり、少し年上の少年が立っていた。
「いつもすみません、妹がお世話になります」
落ち着いた口調で礼儀正しく挨拶をする少年──クレド。
キリエの兄であり、しっかり者の彼は、時折妹の遊び相手をするためにこうして一緒に訪れることがあった。
「ふふ、いいのよ。ネロもキリエと遊ぶのを楽しみにしてるみたいだし」
ビアンカが笑顔で迎え入れると、クレドは少しだけ緊張を解いたように見えた。
「ネロー! キリエが来たわよ!」
ビアンカが声をかけると、リビングの奥から足音が駆けてくる。
「キリエー!!」
飛び出してきたのは、元気いっぱいのネロ。
彼はキリエの姿を見つけると、ぱぁっと顔を輝かせた。
「今日もいっぱい遊ぼうね!」
「うん!」
そんな二人の様子を見て、クレドがふっと微笑む。
「まったく……ネロは本当にキリエが好きなんだな」
「えへへ!」
キリエは照れくさそうに笑いながらも、ネロと手を繋ぐと、そのまま家の中へと入っていく。
「ほらほら、走ると危ないわよ!」
ビアンカが声をかけるものの、すでに子供たちは夢中になっていた。
リビングの床におもちゃを並べ、キリエとネロが何やら楽しそうに遊んでいる。
その横で、クレドは苦笑しながら二人の様子を見守っていた。
「やれやれ……僕も付き合うのか?」
「お兄ちゃんも!」
「……仕方ないな」
クレドはため息混じりに言いながらも、すぐにネロとキリエの輪に加わる。
そんな三人の様子を、ビアンカは微笑ましそうに見つめていた。
「……ふふ、いいわねぇ。子供が賑やかなのは」
そして、バージルは、まったく我関せずといった様子で紅茶を飲んでいた。
静かに、優雅に、まるでリビングの騒がしさなど存在しないかのように。