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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第5章 ふとした日常


 バージルが窓際に座り、紅茶を飲んでいると、ビアンカが小さく声をあげた。


 「おおっと、すごいすごい!」


 見ると、床の上でネロがもぞもぞと動いていた。

 小さな体を支えながら、今にも立ち上がろうとしている。


 「お? 立つか? 立つかー?」


 ビアンカが手を差し伸べる。

 ネロは、彼女の方へ向かって小さな腕を伸ばし──

 バタリ。

 尻もちをついた。


 「おーおー、惜しい!」


 ビアンカは笑いながら、ネロの頬を撫でた。

 バージルは、その様子を静かに眺めていた。


 「……何が面白い」

 「だって、もうすぐ歩けそうなんだよ? すごいじゃないか」

 「……ふん」


 バージルは、特に興味がないといった顔をしたが、目だけはしっかりとネロを見つめていた。

 その視線に気づいたかのように、ネロがふいにバージルの方を向いた。

 小さな手が、バージルに向かって伸びる。


 「……」


 バージルは、僅かに目を細めた。


 「バージル、おいでって言ってるよ?」


 ビアンカが茶化すように笑う。

 バージルは黙ったまま、ほんの一瞬だけ考えた。

 ──手を伸ばせば、この子は歩くのだろうか?

 そんな馬鹿げた思考を振り払うように、バージルは立ち上がった。


 「俺の手など借りずとも、いずれ歩くだろう」

 「ちぇっ、つれないねぇ」


 そう言いながらも、ビアンカの笑みはどこか優しかった。

 ネロは、転んでも転んでも、何度も立ち上がろうとしていた。

 バージルはその様子を見届けながら、もう一度、紅茶を口にした。
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