第4章 ダンテ、顔を出す
ダンテがフォルトゥナに現れたのは、ある晴れた昼下がりだった。
「へぇ、本当に住んでるんだなぁ、お前」
玄関先に立ちながら、ダンテは感慨深げに家を見回した。
まさかバージルが女と同居しているとは、にわかには信じがたかったが――こうして目の前に家がある以上、どうやら事実らしい。
「何の用だ、ダンテ」
ドアを開けたバージルは、明らかに歓迎する気のない声でそう言った。
「いやぁ、ちょっとした噂を聞いてな」
「噂?」
「お前が女と一緒に住んでるって話だ。こりゃ確かめないわけにはいかねぇだろ?」
バージルの目が細まり、わずかに威圧的な気配が漂う。
「……誰から聞いた?」
低く静かな声音に、ダンテは肩をすくめた。
「おっと、そりゃちょっと言えねぇな。情報源の秘匿ってのは大事な――」
「……」
「いや、そんなガチギレしなくても!」
じりじりと迫るバージルに、ダンテは苦笑しながら後ずさる。
そのとき、後ろからふと気配が動く。
小さな咳払い。
視線を向けると、ビアンカがわかりやすく目をそらしていた。
バージルはすかさず鋭い視線を向ける。
「……貴様か」
「…………」
「ビアンカ」
「………………」
「ビアンカ」
「……その……」
明らかにバツが悪そうに、ビアンカは小さく縮こまる。
「えっと……いや……だって……」
「何のために」
「……えっと……」
バージルの視線に射抜かれ、ビアンカはますます声を小さくする。
彼の機嫌がどんどん悪くなっているのが、言葉にしなくても伝わってきた。
「……後で話す」
短く言い捨てると、バージルはドアを開け放つ。
「入れ」
「へぇ、俺を招いてくれるとは珍しいな」
ダンテはにやりと笑い、家の中へと足を踏み入れる。
ビアンカはこっそりバージルの機嫌をうかがいながら、そっと後ろに隠れるようにしていた。