第12章 守られること
「……ちょっと」
思わず視線を逸らすビアンカの頬が、じわじわと熱を帯びる。
バージルはそんな彼女を逃がすつもりはないのか、しっかりと腰を抱え込んで固定する。
「……なに?」
気まずそうにする彼女を、バージルはじっと見つめたまま動かない。
どうやら彼自身は、これが特に気恥ずかしいことだとは思っていないらしい。
むしろ、ごく当然のことを言ったまでだとでも言いたげに。
(……なんなの、これ)
ビアンカは、唇を噛みながら考える。
さっきまで、あんなに自分の中にあった不安が、彼の言葉ひとつで吹き飛んでしまった。
そんなの、ずるい。
ずるいのに、不思議と嫌じゃない。
(はぁ……もう、完敗だね)
ビアンカは、バージルの首に腕を回し、ため息混じりに呟く。
「じゃあさ」
「……?」
「もうちょっと、選ばれたってことを自覚させてくれない?」
そう言って、彼の首元に顔を埋めると、バージルは一瞬だけ息を止めた。
それがほんのわずかな戸惑いだったと気づいたのは、彼がビアンカの背をそっと撫でるように手を回したからだ。
まるで、確かめるように。
そして、「選んだもの」を抱きしめるように。
彼がそうしてくれるなら、この先どんな未来が来てもそれはきっと、恐ろしいものじゃない。