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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第12章 守られること


 少しの間を置いた後、バージルはふと視線を外しながら呟くように言った。

 「……生まれたとして、ネロのように育つのなら、それも悪くはない」

 ビアンカは思わず目を瞬く。

 彼がそんなことを言うとは思わなかった。

 やはり彼は不器用なりに家族を愛しているのだと思わされてしまう。

 (やっぱり変わったね、バージル)

 でも、それだけではビアンカの不安は晴れない。

 彼が「俺の子供として育つなら」と言うのは、つまり「半魔の子として」だ。

 そう、問題はそこなのだ。

 「もし、魔女として生まれたら?」

 再び訪れる沈黙。

 バージルは、目を細めながら少し考え込むような表情を見せた。

 やがて、短く答える。

 「そのときは、そのときだ」

 「バージル……」

 ビアンカは、思わず彼の腕にすがるように手を伸ばした。

 彼は、その手を振り払うことなく、ただじっと見つめる。

 「不安か?」

 そう問いかける声は、驚くほど穏やかだった。

 ビアンカは、正直に頷く。

 「……うん。怖い」

 「お前が、二度とそんな宿命に縛られることはない」

 その言葉に、ビアンカは目を見開く。

 彼の瞳はまっすぐで、何の迷いもなかった。

 ビアンカの恐れを全て見透かし、それを払うように言い切ってくれる。

 かつてのバージルなら、こんな言葉は出てこなかっただろう。

 彼はかつて、「力こそ全て」と信じていた。

 だが今は、違う。

 自分の力を、守るために使おうとしている。

 それを理解したときビアンカの胸の奥にあった不安が少しずつ解けていくのを感じた。

 「……そっか」

 彼を信じてもいいのかもしれない。

 いや――

 もう、とっくに信じていた。

 だからこそ、今もこうして隣にいるのだ。

 「バージル」

 彼の名前を呼びながら、ビアンカはそっと彼の肩に頭を預けた。

 彼は、それを黙って受け入れる。

 「……もし、本当に女の子が生まれたらさ」

 少し間を置きながら、彼女は小さく囁く。

 「どんな名前がいいと思う?」

 バージルは、その問いにはすぐには答えなかった。

 まるで、それについて本気で考えたことなどなかったかのように。

 けれどその沈黙が、何よりも彼の熟考を物語っていた。
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