第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
フォルトゥナの中心にある大聖堂。
祭祀の儀が始まり、堂内には厳かな雰囲気が漂っていた。
人々の祈りの声とともに、透き通るような歌声が響く。
「――♪」
キリエの歌声が、静寂を打ち破るように流れ始めた。
その清らかで力強い響きは、堂内のすべての人々の心に染み渡り、まるで光が差し込んだかのような錯覚を覚えさせる。
信徒たちは感嘆し、目を閉じてその旋律に身を委ねていた。
その頃、ネロはようやく祭祀の会場に到着した。
任務を終えて急いで戻ってきたものの、キリエの聖歌が始まる時間には間に合わなかった。
だが、彼女の歌声だけは、遠くからでもはっきりと聴こえていた。
(キリエ……)
彼女がどれだけこの日のために努力していたか、ネロはよく知っていた。
だからこそ、どうしてもこの祭祀には駆けつけたかったのだ。
彼はすぐに、キリエが戻るであろう席へ向かう。
そこには、付き添いとしてビアンカが座っていた。
「おかえり、ネロ」
「母さん……」
「間に合ってよかったわね」
「ああ……親父は?」
「来るわけないでしょ」
ネロは肩の荷が下りるような安堵を感じながら、ポケットの中の小さな箱を取り出した。
中には、ギフト包装されたネックレス。
この日のために用意したものだったが、いざ渡そうとすると、なんだか気恥ずかしい。
ネロは少し考え、キリエが戻る席にそっとそれを置いた。
そして、何事もなかったようにビアンカの隣へ腰を下ろす。
──数分後。
キリエの歌が終わり、聖堂に大きな拍手が響く。
彼女はゆっくりと退場し、席へと戻ってきた。
「キリエ、お疲れさま。素晴らしい歌だったよ」
「ビアンカさん……ありがとうございます」
キリエは緊張から解放されたのか、ほっとした笑顔を見せる。
そして、自分の席に腰を下ろそうとした瞬間、
「……?」
彼女の視線が、小さな包みに気づく。
「これは……?」
彼女はそっと手に取った。どう見ても、プレゼントだ。
キリエの目が丸くなる。
「……!」
彼女は驚き、思わず隣に座るビアンカを見た。
「ビアンカさん、これ……?」
「ふふっ」
ビアンカは意味ありげに微笑み、視線をネロへと向ける。
「さあ、どうかしらね」