第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
こうしてようやく、司令塔の許可が下りたところで、私も本格的に準備を始めようとした。
しかし…
「えぇ?!ほんとにそれでいいのぉ~?!」
この通り、“反対票”はまだ効力を有していたらしい。
そんな、未だ納得のいっていない詩織の方に、キャプテンが振り返ったのが横目で見えた。
「相手が作戦変えてきたんだ。
こっちも変えるしかないだろ」
そう言った後にキャプテンは、「紗恵、ボールよこせ」と言ってボールを回すように促していた。
紗恵は「だってよ~」と詩織に言いながら、キャプテンにバウンズでボールを回していた。
こうして、作戦決行の準備が整った時。
詩織は「あ。こいつら本気だ」と理解したはずだ。
「ってことは…」
これほどまでに、詩織がこの作戦を嫌がる理由。
それは、作戦自体が「単にリスキーだから」ってだけじゃない。
この作戦に必要なのは…そうだな?
“生贄”1人。
“囮”1人。
“護衛”1人。
“銃兵”1人。
“待機”1人。
…ってとこだろうか?
そして、普段から“仲間守りたがり”、“パワー勝負やりたがり”の詩織が。
ここで担当することになる役回り、ってのが…
「じゃあワタシだけ待機ってことぉ?!」
そりゃ嫌がりもするか。